既存宅地

今では存在しない過去の遺物ですが既存宅地の知識も参考に。

農地

既存宅地(きぞんたくち)は現在の制度ではすでに消滅しているので、これから 不動産を売買したり住宅を新築する人にとってはあまり必要のない知識ですが、 過去にはこんなのもあったんだということを知るのも悪くはないことですし、 せっかくですので解説しておきましょう。 市街化調整区域はその土地の市街化を抑制する区域で、勝手に建物を建設しては ならず建築が厳しく規制されています。 宅地だからとみんなが勝手にマンションを建築したらその街並みはちょっと悪く なりそうですし、ある程度の規制は誰かがするべきでしょう。 では市街化調整区域内ではどうすれば建物を造ることができるのでしょうか。 まずは開発許可を受けてその開発許可に適合する建築を行なう場合で、これは 許可された範囲内でならオッケーとなります。 他には建築許可を受けた場合、そして建築許可を受ける必要のない物件を建築 する場合です。 このようにそれなりの建築物を建てるには許可が必要になっているのですが、 今から10年近くも昔の平成13年の5月までは既存宅地という制度で許可が 不要になるケースもあったのです。 どんな制度かというと、市街化調整区域内でも条件さえ満たしていればそこは すでに宅地であったと認められるような感じでしょうか。 既存宅地に該当する土地なら建築許可を受けなくても、ある程度の範囲内で新築 したりリフォームすることが自由にできたのです。 その条件は市街化区域に隣接している地域内の土地であることや、市街化調整区域 になった際にすでにそこが宅地であったこと、住宅が50軒以上以上立ち並んでいる 町であること、などがありますが、本人では判断出来ないのなら役所に問えば きっと条件を満たすか満たさないかを教えてもらえたのでしょう。 こんな言い方をするのはこの制度はもう廃止されているからで、平成13年の5月 18日に5年後にはなくなることが決定したのです。 いきなり廃止にしたら困る人もいるでしょうし、5年間の猶予は適切な措置だと 思いますが欲張りな人だともっと長期間の猶予を欲しがるかもしれません。 でも当時6年後に家を新築しようとしていた人なら1年前倒して5年後にすれば いいわけですし、そんなに先の計画を立てている人も少数だろうからスムーズに 制度の廃止は行われたんだと思います。 既存宅地のうちに建て替えようというのなら5年もあれば充分ですし、この期間 に文句を言うのは我がまますぎるでしょう。 5年という年月は文字にすればほんの二文字ですが、小学1年生の子供が小学 6年生に成長するほどの長い時間で、ピカピカだったランドセルもボロボロに くたびれてしまうほどです。 とっても長く感じられる千日でも約3年でしかありませんし、5年だとその1.6 倍近くもあるのでかなりの長期です。 そんなわけで平成18年には既存宅地という制度の対象になる物件は一切なくなり 今では昔話も同然の存在になってしまいました。 平成13年から18年の間は、それ以前に既存宅地だと認められた実績を持つ土地 に限り、自己の居住または業務を行なうことを目的とする建築行為ならそれまで と同じように建築に際し建築許可を受ける必要はありませんでした。 ですが自己の居住または業務を行なうことを目的としない建築行為はこの猶予の 対象にはならず、建築許可を受けなければなりませんでした。 なんにせよ普通に自宅を新築したり外構をリフォームしたり、そういうことを する人にとっては充分な措置だったので不満をもった国民が騒いだりすることも なく、みんな安らかな笑顔を浮かべながら制度の廃止を迎えました。 最初にお伝えした通り今ではもう対象の物件は皆無の既存宅地ですが、こんなのも あったということだけ覚えておきましょう。